2008年10月31日金曜日

ベネズエラ,大規模な停電に襲われる

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ベネズエラ,大規模な停電に襲われる

ベネズエラ(注2),数度カラカスを訪れたが,余りよく知らない。石油が出て,強権のチャベス大統領(注3)が反米で,産業の国有化を目指して走ってきたが,昨年,2007年12月の憲法改正国民投票で新任されず,2008年11月の大統領選挙が,チャベス大統領の一つの山場である,と言う知識ぐらいか。調べてみると,国土面積91万6445平方km,人口2,537.5万人(2005年推計)で,首都はカラカス(注4)である。ベネズエラは総発電量のうち,68%を水力発電でまかなっている。カロニ川のグリダムはとくに重要なプラントである。

問題の石油については,今後追っかけて行くが,とりあえず次の知識。マラカイボ湖など西部地域でとれる石油はGDPの25%を占める。2002年の原油生産年間9.5億バレル(単純に割ると日260万バレル),推定原油埋蔵量は780億バレル,生産された原油の殆どは,オランダ領アンティルへ精製のため輸出される。また有数の天然ガス生産国でもあり,2002年の生産量は298億立方mであった。

2007年2月9日の記事(注1)で,「ベネズエラ政府,米AES保有の電力会社株を買収」,と題して,国有化を進めたことが書いてある。チャベス大統領の資源国有化政策に対しては懸念も強まっているが,AESのポール・ハンラハン社長兼最高経営責任者(CEO)は覚書の調印式で,買収はベネズエラの法律に従い,「公正な」手続きで進められたと述べた。ゆっくり経緯を調べてみよう。

さて今日の記事,大規模な停電である。問題は,2008年11月に行われる大統領選挙と密接に関わってくる。先週の日曜日,首都カラカス(注4)を含む人口緻密な地域を停電が襲った。チャベス大統領(注3)がまず発した言葉は,「電力会社の担当者は良くやった,早く故障を見つけ,早速に送電を開始した。」,という賞賛の言葉であった。更にチャベス大統領(注3)は続けて,送電網の増強には時間がかかり,国有化が原因とする声を,強く拒絶した。

停電は,日曜の朝に起き,全国の3分の一が影響を受けた。首都カラカス(注4)では1時間で回復したが,他の地域では2時間以上かかるところも出てきた。イズキエルド国家電力公社総裁(注5)がテレビで説明したが,負荷の小さい日曜日に,なぜ停電が起きたのか分からない,と言っている。前回2度の停電は,ウイークデーであった。

この停電が,2008年11月に行われる選挙で,与党のベネズエラ統一社会主義者党PSUV(注6)にとって大きな打撃となる可能性がある。電力会社は2007年以来完全な国有化となっており,チャベス大統領(注3)は,送電網改善のために,十分な投資を行うと約束してきた。チャベス大統領(注3)は,この事故は国有化のせいではない,15分で原因を見つけた電力担当者は,これは効率化の見本だ,と強弁している。

(注) (1) http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-24653620070209,(2) Venezuela,(3) Venezuelan President Hugo Chavez,(4) Caracas,(5) the head of the state electricity corporation, Hipolito Izquierdo,(6) United Socialist Party of Venezuela (PSUV) ,(7)

●ペルー,スイス企業に188MWルトマール水力,委託

ペルーのエネルギー鉱業省(注7)は,スイスのスイスハイドロ(注7)に対して,188MW,レタマル水力プロジェクト(注8)の可能性調査FS(注9)を12ヶ月間で行うことで,委託した。場所はクスコ(注10)のウルバンバ県(注11)のマチュピチュとオランタイタンボ地区(12)にまたがる。この調査の中には技術,安全,環境の他,国の文化財の保全に関わる調査も含むもので,電力委託法(注13)に基づく。

地図を開いてみると,クスコ(注10)の北,マチュピチュとオランタイタンボ地区(12)の間にあるとすれば,このマチュチュピの世界遺産に近く,この遺産や観光資源への影響が大きいので,スイスのコンサルタントに委託したのだろう。

(注) (7) Switzerland's Swiss Hydro,(8) 188-MW Retamal hydropower project,(9) a feasibility study,(10) Cusco,(11) province of Urubamba,(12) the Machupicchu and Ollantaytambo districts,(13) the Electricity Concessions Law,(14)

Reference

●081024E Venezela, news.bbc.co.uk
ベネズエラ,大規模な停電に襲われる
Venezuela suffers big power cut
http://news.bbc.co.uk/2/hi/americas/7679492.stm

●081024F Peru, livinginperu
ペルー,スイス企業に188MWルトマール水力,委託
Peru grants Swiss Hydro concession for 188-MW Retamal hydro project
http://www.livinginperu.com/news-7625-miningenergy-peru-grants-swiss-hydro-concession-188-mw-retamal-hydro-project

2008年10月9日木曜日

気候変動会議の中南米報告

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気候変動会議,南米諸国は問題は少ないが影響は大きい

スペインのバルセロナで開かれている気候変動会議 Climate Change World Conservation Congress で,Pamela Cox, the World Bank’s Vice President for Latin America and the Caribbean,女史が報告した,中南米に於ける気候変動問題の要約である。世界全体に比べて,温暖化に対する問題は少ないが,地球全体から受ける影響は非常に大きい,との趣旨で,中南米諸国の対応を説明している。

ラテンアメリカとカリブ海沿岸諸国を地域として扱っているが,数字を中心に要約する。地域の温暖化ガス排出量は世界全体の6%で,年大輪喪失を入れても10%で小さいが,特に貧困層などへの温暖化による影響は大きい。

]地域諸国の中で,Brazil, Colombia, Ecuador, Mexico and Peru の5つの国は,特に世界の10指に入る生物多様性の国で,特にアンデス山脈の東側である。ラテンアメリカの熱帯林は,世界の50%で,生物量,バイオマスに直すと65%に達する。

地域の主要な気候変動要素は次の通り。アンデスの氷河融解で10~20年後には全部なくなるだろう。Bolivia, Ecuador, Peru での河川流量への影響は大い。アマゾンの熱帯林は,2~3度の温度上昇で,20~80%失われ,砂漠化の影響は北米まで達するかも知れない。その他,マラリアやデング熱
の疾病の問題や,珊瑚礁の白色化による魚類や観光への影響が出るだろう。

ラテンアメリカは,水力のポテンシャルが大きく,石炭火力への依存が少ない。2004年に於ける世界の発電量の中で,地域の占める割合は6%であるが,温暖化ガス排出では3%である。地域のエネルギーの11%が水力で賄われているが,世界の発展途上国の平均は3%である。地域の包蔵水力は687,000MWで,その26%が2015年までに開発される。

交通運輸の面でも,世界平均に比べ,ガス排出は少ない。注目すべきは,サトウキビによるバイオ燃料,エタノールの生産の可能性で,ガソリンの90%まで大体可能であろう。丘の斜面で育つので,土地利用や食物への影響は,限られている。

温暖化適応プロジェクトでは,世界銀行が承認した二つの Climate Investment Funds (CIFs) と US, Japan, UK, Germany, France and other European countries の貢献で,60億ドルの予算がプレッジされている。

Reference

●081009G South America, web.worldbank.org
気候変動会議,南米諸国は問題はない,局部的な問題のみ
Climate Change World Conservation Congress “Latin America is not the problem but part of the solution,” VP Pamela Cox http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/NEWS/0,,contentMDK:21932327~pagePK:34370~piPK:34424~theSitePK:4607,00.html

2008年9月25日木曜日

ブラジルの Electrobras,ペルーで5つの水力開発へ

これから一週間に一度,中南米のエネルギー問題を扱うことにしました。久しぶりのペルーの情報で懐かしい。過去の記録を見ると,1998年8月にペルーを訪ねている。その時の写真を見て下さい。JICAにいるときに,フジモリ大統領が実現して,私の周囲も大いに盛り上がっていた。しかし,1996年,私が日本に帰った直後に,ゲリラによる日本大使館占拠事件が起こって,ODAも殆ど動かなくなってしまった。
http://my.reset.jp/~adachihayao/PeruB.htm

それでも,時々,ペルーで発電所建設を続けるJパワーの友人からメールを貰ったりして,すごいなあ,と敬服していたものである。それは Yuncan 水力プロジェクトで,JBICの円借款が関わったものだが,今それを紐解いている。もう友人も帰国したと聞いているので,無事に完成しているのだろう。地図で見ると随分アンデスの山奥である。

Yuncan 水力プロジェクトは,パスコ県パウカルタンボ町にあって,ペルー北東部のアマゾン川支流ウアチョン川及びパウカルタンボ川に計画されている一般水力発電計画。ウアチョン川には取水ダム(ウチュウエルタ・ダム)を,パウカルタンボ川には調整池ダム(ウアジャマーヨ・ダム)を建設し,これら二つのダムと発電所を延長約20kmのトンネルで結び,両河川より最大毎秒30トンの水を取水し513mの有効落差を利用して出力130MW,発生電力量約900GWhの発電を行う,と記されている。

ペルーの電力事情。少し古い,Jパワーのメモを見る。1998年の発電電力量は,18,552,700MWhであり,その内訳は,水力 137億8,770万kWh(74%)火力47億6,510万kWh(26%)であり、水力発電に大きく依存している。また、電気事業者の発電電力量は167億9,140万kWh(91%)、自家発の発電電力量は17億6,140万kWh(9%)となっている。

今日の記事。今,ブラジルの Sao Paulo で開かれている ExpoPeru 2008 に出席したペルーの minister of energy and mines, Juan Valdivia がブラジルの国家電力公社 Electrobras と話し合い,Electrobras のペルーに水力への投資が決定した,と,Ministry of Energy and Mines (MEM) から発表があったものである。

全体的には,10の大規模水力プロジェクトが協議されており,そのうち5つに於いて,投資が具体化した,と言うことで,Peru’s vice minister of energy, Pedro Gamio が調印に当たった。その中でも特に記すべきものは,Inambari Hydroelectric Power Plant in Madre de Dios が20億ドル,1,355MW,Paquitzapango Hydroelectric Power Plant in Junin が,1,379MWである。いずれも2014年運転開始を目指している。

位置を調べてみたが,不正確。この地図を見て下さい。
http://maps.google.com/maps/ms?ie=UTF8&hl=ja&msa=0&msid=115815940617368731276.000457b0bea947bbdd6cb&ll=-5.266008,-65.917969&spn=75.202753,111.09375&t=p&z=3

Reference

●080924H Peru, livinginperu
ブラジルの Electrobras,ペルーで5つの水力開発へ
Brazil's Electrobras to launch five hydropower projects in Peru
http://www.livinginperu.com/news-7443-miningenergy-brazils-electrobras-launch-five-hydropower-projects-peru